音響設計


● 室内音場の特徴


反射音があること:
屋外では反射音はほとんどありませんが,室内では壁,床あるいは天井から音が反射されるため,音源(楽器など)から直接届く音(直接音)だけでなく,反射音もあわせて聞いていることになります。したがって,同じ音源から出た音でも,室内と屋外では同じようには聞こえません。室内の音場での聞こえ方は,反射音がどのようにどのくらい返って来るかによって,大きく異なります。


○残響:
上述のように多数の反射音が次々と返ってくる結果,「残響」が形成されます。残響があると,音源が停止して音が止まった後でも,響きが残って聞こえることになります。残響は室内音場の最も顕著な特徴であり,残響の特性や質によって,聞こえ方は大きく異なります。

◇ 残響の量:残響の多い・少ないは,残響の長さ,すなわち残響時間で表されます。残響時間は,室内の音のエネルギーが,音源が鳴っているときの100万分の1に減衰するまでに要する時間になります。

 

残響時間の定義と測定、計算
残響時間は室内の響きの状態を示す指標の一つで、室内の音のエネルギーが-60dB(100万分の1)になるまでの時間を残響時間と定義し、RT(Reverb Time)60と表記されます。単に「残響時間」とのみ表現された時には、通常RT60のことを指しています。


残響時間の測定方法
残響時間の測定をサウンドレベルメーター(騒音計)で測定する場合は、ピンクノイズやピストルの発射音などを音源として残響音のレベルが減衰するまでの時間を計測します。 M系列ノイズやTSP(Time Stretched Pluse)、パルスを利用してインパルス応答を測定した場合には、室内のインパルス応答をシュレーダー積分して得られるエネルギー減衰カーブ(残響波形)から求めることができます。残響時間に関する数式を以下に紹介します。


◇ 残響時間に関する公式:1

残響時間に関する公式:1

 

残響時間=0.16×(室の容積[m3])/(室の全吸音力)

これを,セイビン(Sabine)の公式という.「室の全吸音力」とは,大ざっぱに言えば室内にある音を吸収(吸音)する物質(吸音材)の量となります。この式で重要なのは,


(1)室の容積が大きいほど(大きな室ほど)残響時間は長い,
(2)室内に吸音材が少ないほど残響時間が長い,ということです。



◇ 残響時間に関する公式:2

アイリン(Eyring)の残響式による予測
残響時間の計算には、C.F.Eyringが提案した建物の容積、表面積、平均吸音率から概算する計算式があり、建築設計時の残響時間の予測に利用されています。

アイリンの残響式





◇ 残響の特性:上記の式を使えば,室の残響時間が計算できます。ところで,残響時間は周波数によって異なるのが普通です。つまり,上式で「室の全吸音力」は,吸音材の性質に応じて周波数によって異なるため,その結果残響時間も周波数毎に違うのが普通です。一般的には,残響時間は低音ほど長く,高音ほど短くなります。そこで,コンサートホールの特性として残響時間を表記するときには,

(1)各周波数ごとの値を一覧表にする,あるいは
(2)500Hzの残響時間を代表として使う,


のどちらかが行われます。



◇ 残響時間に関する公式:3
 

シュレーダー積分式





距離減衰が少ないこと:
屋外では距離減衰のため,音源から出た音は距離とともにどんどん減衰していく(距離が倍になるごとに6dB減衰する。)しかし,室内では反射音や残響のため,距離減衰が少ないです。 ホールの響きを調節する場合は,まず吸音力を変化することで,大幅に残響の調整が出来ることがわかります。


ナチュラルリバーブが得られる設計はホール設計の重要な要素のひとつとなります。

残響時間の設計の目安





(500Hz・空室時)

利用目的 音の状態・利用範囲 容量(m3) 最適残響時間
リハーサル・多目的ホール 様々なイベント等に対応するよう
音響調整されている
5,000〜10,000 0.8〜1.0
録音・放送スタジオ 定住波などが防止されて、
正確な録音・放送ができる
70〜100 0.3〜0.4
音楽室 音感・発音・発声などが音楽室に最適 200〜300 0.7〜0.9
大講堂 どの席でも講師の声が正確に聞こえる 1,000〜1,500 0.9〜1.3
学校の教室 どの席でも音声が聞きやすい 200 0.6〜0.7
オーディオルーム 適度な余韻と明瞭度が得られる 〜100 0.4〜0.7
プライベート音楽スタジオ 適度な余韻と明瞭度が得られる 〜100 0.36〜0.6



吸音とは・・・

音が運動エネルギーとして媒質中で反射・粗密を繰り返す中で、その摩擦により、熱エネルギーへ転化されたのち熱放射により基の音エネルギーが減少します。 または、反射エネルギーを減衰させる現象をいいます。

主な吸音材には、
・多孔質型材 ロックウール、グラスウールなど
・共鳴器型 パンチングメタル、ボードなど
・板振動型材 木板材
などがあります。それぞれに適した使い方があります。また自然音場中、特定の反射物がない状態や、室内音響においても、開口部の窓などを開け放した状態が、吸音率100%となり、残響室法吸音率測定方等により、物質の吸音性能は測定されます。



● 室内の音響現象


1. エコー: エコーとは,直接音から遅れてやってくる反射音の内,直接音と分離して聞こえるもので,ホールでは重大な欠陥となることがあります。(音がずれて聞こえたりするので,会話や音楽が聞き取れなくなる。)(残響=エコーではありません。)

2. 定在波: それぞれが音の反射性の高い平行な平面の間などでは,音が繰り返し同じ経路で反射されるため,その距密線と波長の関係において、共鳴しやすい音のみが顕在化し、一般的に不快な音が生じる現象です。

3. 音の焦点: 大きな凹曲面があると,音が焦点にあつまって,音の分布が均一にならない現象です。
 例) 鳴き竜、フラッターエコー

4. 音圧の分布:ホールなどでは音圧がほぼ均一に分布していることが必要です。しかし,実際には音の波動性のため,音圧の高いところと低いところが出来やすいのが実状です。

5. ブーミング: 特定の周波数の音(主に低音)が特によく響き,ブーンといった音をたてるものです。(風呂場やガレージなど,比較的小さな空間で,吸音が不足している場合に起こりやすい現象です。)

6. 残響過多: 音楽を聴取する場合には特に,残響は豊かな響きを得るために必要ですが,度を超えると障害となります。(長すぎる残響は邪魔になる。)特に,会話の場合には残響時間が長すぎると,著しく明瞭度が下がることがあります。
これらの特異現象を防ぐには,主に吸音処理が行われます。
日本の建築史の中では 、あまり気にされてきませんでしたが、欧米諸国において、残響時間の設計は、その他の設計と同じく当たり前となっています。

7. そのほか,反射音の到来する条件によっては,音色が変わる(カラーレーション),音が音源と違う方向から聞こえる(音像移動)などの現象があります。



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● 波動現象としての音の習性


波の振動の一定時間あたりの繰り返し回数が周波数であるのに対し、1回繰り返すのにかかる時間が周期です。
周期は周波数の逆数であり、例えば、1000Hzの音の周期は1/1000=0.001秒であり、1000Hzの音は、1秒間に1000回の振動を繰り返しており 1回の振動あたりに0.001秒かかっていることになります。
時間的な繰り返し間隔を周期と呼ぶのに対して、場所的な繰り返し間隔を波長といいます。
波長とは、音圧の最大点からその隣の最大点までの距離のことです。
音速が1秒間に音波の進む距離、周波数が1秒間に音圧の最大・最小を繰り返す回数ですから、音速を周波数で割り算すれば波長が求まる事になります。
音に限らず、電波や光なども波の伝わり方はこの波長によって決定されるのです。

・反射
フラッターエコー・鳴き龍・定在波・ブーミングなどは、時間差による反射音と干渉による共振で起こる音響障害の原因となります。

・屈折
媒質の変化率により求める事ができる音の屈折率です。弊社の防音工事では上記反射と屈折により音の透過に対する抵抗値を高める設計を行います。

・回折
音の回り込みです。垣根の向こう側のお家の庭の声(イヌの鳴き声)が聞こえる現象です。

・干渉
カラーレーション・レゾナンス周波数。音の位相が重なったとき波の高低が大きくなる現象です。
ちなみに180℃ずれたときには波の高低差がなくなり音の波が消えてしまう現象です。
アクティブノイズコントロールは、この現象を利用した技術です。

という大きくは4つの現象に分けることができます。


● 反射面の検討および室形状による振動モード


建物により、室形状はそれぞれ異なりますが、室の縦横寸法比及び容積により室内の空気の共振周波数は変化します。
例えば、パイプオルガンで筒が長ければ長い方が低い周波数帯の音を奏でるのに似ていて、鉄筋コンクリート造の建物の廊下部分で低い音ばかりが耳についた経験はないでしょうか?
これは、数式で求めることが可能ですが、室内音響を設計するときに検討しておく必要があるのです。
このような検討をせずに設計した防音室では、ある音域ばかりが耳に顕在化して、演奏していて気持ちの良い空間が作れないとともに外部への音漏れに対しても、効率の良い防音効果は得ることができなくなるのです。


振動モードの計算式




 


● 室内騒音値の設計


使用目的に合わせた、適切な室内騒音値の設計も必要になります。

NC値


NC値とは・・・
アメリカの Leo L. Beranek 氏によって提唱された、室の静けさを表す指標です。評価する騒音をオクターブ分析し、どのバンドでも図の曲線を上回らない最低の数値をNC値とします。NC値は、その値が小さいほど静かであることを示し、NC-25 の室はNC-40 の室よりも静かであることを表します。




NC曲線グラフ






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● 音を取り扱う空間を設計するには

防音の面では、反射・屈折を主とする音響インピーダンスの考慮(必要な空気層の距離・想定音源からの特有の位相の角度)
上記を考慮の上、浮き構造にて造る室の床・壁・天井の面密度による遮音性能・質量による制震性能を検討する事で、効率の良い遮音が実現できるのです。


室内音響の面では、既存住宅(新築の場合は使用予定材料)の構成部材の特有共振周波数の特定、その中にインストールする防音室の構成部材との共振周波数の相性、次にできる限りの静かな環境の確保をした上で、室形状による振動モードの計算、そして最後に反射面の検討(音響拡散体の要・不要)・残響時間の設定をしていく運びとなります。

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